先日、お客様の腕時計の摩耗した歯車を新品に交換し、その様子を時計の診断書に載せてお渡ししたところ「歯車の摩耗について今まで勘違いをしていた」とメールをいただきました。
そこで、ここでは歯車の摩耗について簡単に紹介いたします。
皆さんは、「時計の歯車が摩耗している」と聞いた時、次の箇所が摩耗しているとイメージされる方が多いのではないでしょうか?

もちろん矢印箇所が欠けたり摩耗することはあります。
しかし、歯車の摩耗で圧倒的に多いのは次の箇所なのです。

実際に摩耗した歯車の写真がこちらです。

少しわかりにくいかもしれませんが、矢印箇所が摩耗して少しくびれています。ここは歯車の「ホゾ」という呼び方をするのですが、「この程度のこと?」と思われる方も多いかもしれません。しかし、この少しの摩耗が原因で、この歯車が入っていた穴は実はこんなことになってしまっているのです。

赤い穴の周りに黒い粉のような物がたくさん落ちていますが、これは油が切れた状態で歯車が回転し続けたせいで摩耗した証拠なのです。この粉が周りの歯車等に付着して、時計の精度が大きく狂ってしまうのはよくあることなのです。
こうしたことからも、時計は定期的に分解掃除をして、油を注油してあげることが大切なのだとわかっていただけるのではないでしょうか。
何年もオーバーホールしてないという方は、一度検討してみることをおすすめいたします。